2014年10月12日日曜日

あれ、何て言うの?

ハリケーン後の復興についての番組を担当した。
納品をした日の朝、東京に台風が上陸し、
昼頃には過ぎ去っていた。

会社帰り、駅から自宅までを歩く。
雨で空気が洗われたのか、すっきりとした色の夜空だった。
見上げると、月が出ている。満月でもないのに、妙に明るい。
周りには、ほわっと輪がかかっている。

あれ、どこかで見たな、と思った。
翻訳のために、台風や気象に関する本をいくつか手元に揃えていた。
家について、パラパラと本をめくる。

その本によれば「ハロ」というらしい。太陽に出ることもある。
月光が、大気上層の巻層雲などを通過するとき
雲に含まれる六角柱状の氷に屈折して出現するのだそうだ。

ウィキペディアでは「暈(かさ)」という見出し語で出ている。
こんな漢字、字幕ではそのまま使えない。

朝日新聞では、どうだろう。
太陽の場合、「日暈(ひがさ)現象」とルビ表記。
http://www.asahi.com/area/tokyo/articles/TKY201308170333.html

気象庁は、「暈(うん、かさ、ハロー)」と3つ書いてある。
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq13.html

いろいろ呼び方があるらしい。


映像翻訳が楽しいのはこんな時だ。
知らなかったことを知る。
あるいは、知らないことにさえ自分が気づいていなかったことを
思い知らされる。

普段は気にも留めなかったことや興味が全く湧かないことでも
無理やり調べていくと、ほほう!と思うことがある。
翻訳をきっかけに、出会う本も多い。

だから何?ということや、ものの名前は知らなくても生きていける。
すぐに何かの役に立つわけではない。
でも、きっと人生を豊かにすると私は信じている。

月の暈、かあ。
もう一度見たくて、夕食後、外に出た。
空一面に薄い雲が広がっている。
暈はもう消えてしまっていた。

2014年8月24日日曜日

6月のニューヨーク



ロビン・ウィリアムズが出演している映画で一番好きなものは、「フィッシャーキング」である。
監督は「12モンキーズ」や「未来世紀ブラジル」のテリー・ギリアム。

誰かを救おうと働きかけることで、自分自身も救われる。
人と人のつながりを通じ、救いの連鎖が幸せを呼ぶ。
嘘みたいに幸せがどっと押し寄せて、気持ちがよくなる映画。

グランドセントラル駅で、くるくると踊るようなシーンが素敵だった。

「6月のニューヨークは好きかい?」
このフレーズが繰り返し出てくる。

6月のニューヨーク。行ってみたいな。

2014年8月22日金曜日

「フェルマーの最終定理」


『フェルマーの最終定理』
サイモン・シン著 青木薫訳

私は高校数学でつまづいた。数学の素養はない。
この本を読み終わったあとも
モジュラー形式がどんな世界なのかも想像できない。
楕円方程式なんて、初めて聞いた。
それでも本書は面白かった。

1994年、アンドリュー・ワイルズが
約360年間どんな数学者も解けなかった問題を完全に証明した。


17世紀の数学者ピエール・ド・フェルマーによる命題だ。
フェルマーの最終定理と呼ばれている。

この問題は、ピタゴラスの定理に由来している。
本書は命題が生まれる前のピタゴラスの時代から1994年までを描く。

有名な数学者たちが、この問題に挑んでは失敗してきた。
ついには賞金がかけられる騒ぎにまで発展。
命題をめぐるドラマに心動かされるノンフィクション。
ワイルズが取り組んだ8年間の物語、とりわけ最後の1年間の話は感動的だった。

翻訳には、唯一の答えはない。
正解はあるが、正解の範囲があるだけ。
範囲の中で最善を尽くして、もっとよい表現はないかと模索するのが苦しくも楽しい。
正解の幅とその可能性が翻訳の面白いところだろう。

一方、数学は曖昧さを一切排除した完璧な世界。
空気も、摩擦も、抵抗も存在せず、普遍的。
数字が古びることはない。「証明」は絶対的だ。
答えをバシッと決めれば、
唯一の答えが永遠に真であり続ける数学の世界に憧れを感じた。

デカルトの言葉が出てくる。
超越的な問題を論じるときは、超越的に明瞭であれ
著者はまさにそれを実践している。
複雑な説明を柔らかい言葉で言い換えて
「難しくなりそう」という読者の不安を消し去ってくれる。

例えば、証明の鍵となる「帰納法」について、彼は「ドミノ倒し」と表現している。
nが真で、n+1も真ならば、すべての自然数において無限に真、ということをドミノにたとえたのだ。

最初のドミノ牌を倒し、次のドミノ牌も倒すことができれば、どこまでも牌を倒すことができると説明する。

この本もしかり。第一章で心を掴まれて、次のページもまたその次もと、一気に読みたくなる本だった。

2014年8月17日日曜日

40年目に好きになる

ハローキティは、今年40周年を迎えた。
これまで、キティには全く興味がなかった。

シンプルな絵は、ミッフィーの模倣に思えた。
目が黒い点であること、まっすぐ正面を見ていることなど。

ミッフィーは大好きだ。絵本の世界があるから。
背景の色が物語の中で重要な役割を果たしている。
一枚の紙にブルーナが余白をたっぷりとって配置し
筆でゆっくり引いた、揺らぎのある線で描かれる。

キティは対照的だ。
キャンバスの上の世界というよりキャラクターグッズのために生まれた。
商業的すぎて、好きになれなかった。

ところが、今年になって急にかわいく思えてきた。
キティは、どんなかぶり物も厭わない。
色んなものとコラボレーションをする。
フグになったり、みかんになったり、キノコになったり。
サンリオピューロランドの赤字を背負って
頑張っていたんだ、と気になるようになり
見ているうちにキティが愛らしく思えてきた。

最近では、ペコちゃんとコラボレーションをしている。
キティは、口がないのがトレードマーク。

しかし、そのアイデンティティをあっさり捨て、ペコちゃんになってしまった。
潔い。
ペコちゃんとハローキティのコラボお菓子発売!
相手を選ばず、仕事をしまくるキティ。
来るもの拒まず、か。
フリーランスもかくありなん、かな。

コラボしているキティを見ると、私も仕事がんばろう、と思う。

2014年8月9日土曜日

ブラックなレート

毎月テキストの日英翻訳を翻訳者にお願いしている。
そのレートの安さに心が痛む。

通常、1文字あたりの料金で設定するのが多いと思うが
その案件はA4サイズ1枚で5,000円。

「フォントは小さくして文字ぎゅっと詰めてね」と引き継ぎを受けた。
「今まで嫌がらせかってくらい、ぎゅうぎゅうで送ってたから(笑)」

いや、笑えない。

この案件は、クライアントから受注したものではなく
事務所の広告宣伝。純粋な費用である。
発注する側としては、費用を抑えたいところだが
対個人事業主にレート叩き
とにかく安くという圧力には嫌気が差す。
ある種パワハラじゃないのだろうか。

前任者の送っていたファイルを見ると
フォントは10.5で、余白を「狭い」に設定している。
まあ、10.5なら、常識の範囲かもしれない。
でも、「狭い」は悪意を感じる。

計算するとペラ5,000円で、1文字3.9円。

納期は翻訳者任せで、いつ納品してもよいからといって
日英翻訳で、1文字4円以下だなんて、プロに頼むレートではない。
せめてペラ1万円くらい出せないのだろうか。
月に1~3枚で、大量にあるわけではないのだから
単価を上げても、会社の企業活動を圧迫する額ではないのではないかと思う。
しかし、何の権限もない私は意見できる立場にいない。

余白の「狭い」を「デフォルト」に変更して広く取り、
段落ごとに1行挿入して、少しゆったりさせるのが、せめてもの抵抗。
それでも、1文字5円レベル。
ああ、ブラック…

2014年8月6日水曜日

みんなギリギリ

とある金曜日のこと。
「ブルーレイ用のxmlの書き出しだけ、お願いすることはできますか?」
とクライアントから電話。

翻訳済らしくSDBはあるとのことだった。
ええ、いいですよ、と答えた。
納期については、TCが合っていれば、すぐに出力するので1時間以内。
合っていない場合は再スポッティングになるので
最低でも3~4日くらい頂けると助かります、と説明。

100分くらいのスポッティングなら本当はそんなにかからないが、
他の案件が動き出した時のためと、
事務所の雑務なども考慮し、残業をしないベースで3~4日くらいと答えている。

ところでスケジュールは先が決まっているのかを聞くと
「いやあ、これ実は危ない橋で――」
と彼は続けた。

「来週の金曜日に劇場公開日で、
映像が届くのが火曜か水曜なんです。
で、BD作って金曜に劇場で流したいらしいんです…」

「あはは!」
と、私は第一声で笑ってしまった。
「え!水曜に映像が届いて、金曜に公開ですか?
あの、それ、ほんとに大丈夫なんでしょうか?」

先方は
「ヤバいっす。確認して、動き出す場合は改めて連絡します」

その日は、これで電話を切った。

もしTCがずれていても、まあ、間に合わないことはない。
単館での上映の場合、だが。

水曜の夕方までに客先でエンコードしたMPEGをもらい、
夜な夜なハコ調整して、木曜の午前に納品。
木曜の午後にオーサリングして、夜に劇場へ届ければ間に合うのかな。

結局その後、連絡はなく、劇場公開日は過ぎた。
何の映画だったのかは知らない。
どうなったのだろうか。

予算も納期も、
どの会社もギリギリでやってるんだな…

2014年8月1日金曜日

Play on Words

ピンク映画の英語タイトルづけの際、気をつけるのは

・内容やテーマ、設定が分かるように
・販売先は英語ネイティブではないため、小難しくない単語で
・短いタイトルでリズムよく

シンプルなものを考えるのこそ難しく、頭を悩ます。

例えば
「女子大生家庭教師ひとみ」(仮題)

シノプシスを読むと、いい成績を取ると、お姉さまがご褒美をくれるらしい。
男子生徒はぐんぐん成績を伸ばし、志望大学に合格するというものだった。
そこで"Sweet Treat"とした。

韻を踏めると嬉しい。

2014年7月30日水曜日

In the Pink

勤めている事務所は、日本の映画を海外に販売する業務を行っている。
一般作もあるのだが、取り扱いのほとんどはピンク映画。

私は字幕担当なのだが、販売のアシスタント業務も行っている。
その中の一つが、映画のタイトルを英語でつけること。

日本のピンク映画のタイトルは、
漢字のエロそうな雰囲気だけでつけていることもあり
タイトルをそのまま訳しても、何だかよくわからない。

背徳美熟淫母、とかね。
まあ、熟女で美人で淫乱なお母さんってことなんでしょう。
で、スワッピングか不倫で背徳感でもあるのでしょう。
このあたりなら英訳は可能。

でも、「性権交代」や「満淫御礼」とか
同音の漢字でエロを表現されると、お手上げになってしまう。

いろんな方向からエロをからめたタイトルに、なるほどなあと思う。
漢字を駆使し、コンパクトにまとめ、エロを表現する心意気。

字幕では造語はNGだけど、言葉遊びのセンスは見習いたい。

2014年7月26日土曜日

永遠のテーマ

チームを組んで行い、途中で互いの訳をチェックする時
私は他人の原稿でちょっとでも引っ掛かったところは、
きっちりコメントをするようにしている。

「マジうっさいわ、この人」と思われているかもしれない。
でも、構わない。仕事なんだから。

返り血を浴びる覚悟で、バッサリ切っている。

ところが、他人の字幕は隙が見えて、勢いよくコメントできるのに、
自分の原稿はなんて無防備なんだと戻ってきたコメントを見て反省する。

結構、しょうもないことを指摘されて、
本当に申し訳ない気持ちになる。

字幕は不特定多数の人が見るものだ。
どんなイジワルな視点で突かれてもいいように
守りを固めておきたいものである。

自分の原稿を客観的にチェックするというのは
永遠の課題だな…

2014年5月29日木曜日

速い、上手い

私が勤めている会社での進め方は
ほかの制作会社と少し違うかもしれない。

途中経過のファイルを仮納品として納品している。
これは配給会社が予告編を作るにあたって
ストーリーを把握するためのもので
文字数に収まっていなくてもよい。
最後まで訳してあり、意味の分かる日本語が入っていて、
ストーリーが把握できればOK。

映像翻訳は1日あたり10分が標準的な作業スピードだと言われている。
クライアントが急いでいない時は
これを目安にスケジュールを組んでいる。

急ぎでない場合は、「仮」の字幕は、
1日10分で換算した上で、マイナス1~2日。
最終納品日は、仮納品から3~4日後くらいにしている。

でも、いつも時間がとれるわけではない。
先日、急ぎの案件ということで、翻訳者に頼みこんで
100分のドラマ作品を3日で仮字幕、
映像到着後7日目に最終納品をして頂いた。

3日って…
いくら何でも言いづらすぎる。
そう思いながらも何とかねじ込んでもらった。

多少の穴はあっても、
仮の段階でも、ちゃんと言葉遊びの部分もひねってある訳が
できていてびっくりする。

依頼している翻訳者は、いつも仕事を抱えていて、
実際には1日10分以上をこなしている。
もちろん、ハコも自分で切っている。

速い翻訳者は上手い。
上手いから速いのかな。

2014年5月11日日曜日

棚からぼた餅

ある日、会社で客先からドラマシリーズの仕事が来た。

レートが安いのでいつも頼んでいる翻訳者には頼めない。
学校つながりの翻訳者でチームを組むことにした。

一本30分と尺が短いので
進行管理の傍ら、私も翻訳をすることにした。

海外ドラマシリーズを訳してみたかった。
パッケージの裏側を見ては、
こういう仕事ってどこにあるのかなと思っていた。

どうしたらいいのか分からないけれど、
いつか私にもこんな日が訪れるのだろうかと
ぼんやり考えていた。

ある日突然、長年の夢が叶った。

制作会社に入ったのはよかったな。

2014年2月21日金曜日

早い者勝ち


学校付属のエージェントからは、
ぽつぽつと翻訳の依頼が来る。

ある金曜の夜11時近くに字幕翻訳の打診が来ていた。
でも、その日は疲れて早くに寝てしまったので
メールに気づいたのは土曜日の朝9時頃。

参加しますと返信したが、すでに人数が集まったとのことで
チームに加わることができなかった。

久しぶりに来た字幕の仕事で、
単価は今までで一番高い。
しかも、やってみたい内容の素材だった。

メールの受信箱の確認もせず
たまたま早寝してしまったために、
逃してしまい悔しい思いをした。

また、ある時は帰宅中にメールを受信していたが
夕食後、片づけが終わってから気がついた。
返信をしたが、すでに定員に達したとのことだった。

家について、ご飯を作り始める前にメールをチェックしていれば…
あの時、電車で本を読んでいなければ…

みんな、返信早いなあ。

以来、iPhoneがブルブル鳴ると慌てて確認するのだが、
そんな時に限って、
プロバイダからの「引越しのご連絡はお早めに」という案内メールで、
「なーんだ」とがっかりしてしまう。

この「なーんだ」に慣れてしまわないようにしたい。
仕事の依頼が頻繁に来ればよいのだが…

2014年2月2日日曜日

おすすめヘッドフォン

映像翻訳者は耳が大切である。
ヘッドホンは耳に悪いと聞く。
だから私はこれまで、ほとんど使ってこなかった。
その代り、外付けのスピーカーを買い、PCに繋ぎ
音を増幅させている。

やっぱりいるのかなあ、とぼんやりしているところへ
制作会社で字幕のチェックをすることになり、
重い腰を上げて買うことにした。

どんなのを買えばいいの?

どうも耳を覆うタイプがよいらしい。
耳たぶは、音を集める役割をしているので
すっぽりかぶさるものがよいらしい。

さらに、3つのタイプがあるらしい。
開放型と密閉型、その中間のタイプ。
職場用なので、音が漏れない密閉型かな。

値段は天井知らず。音質にはこだわらない。
音の始まりが分かればよいのだから。
私は貧乏なので、出しても1万円くらいで手を打ちたい。

ずっと頭にのせているので、重いと疲れる。

密閉型 X 耳すっぽり X 1万円くらいまで X 軽い で探すことにした。

商品レビューを読んでも、オーディオに詳しくないので、表現がよく分からなかった。

「高音がキラキラ!」← よいことなの?
「シャリ感が気になります」← 悪いことなの?
「このヘッドホンはドンシャリです」← どっちかな?

映像翻訳者の中には、ブログを書いている人もいるのだが
ヘッドホンの機種に関する投稿が見当たらない。

みんな、あまりこだわっていないのかな?
何を使っているの?

そこで、テープ起こしをしている人のブログを検索した。
彼らは人の声を拾っているのだから、一番用途が近い。

検索すると、ソニーのMDR-CD900STという機種が好評だった。
スタジオモニター用というものらしい。

ヘッドホンには、映画や音楽を聴くために音を強調させるタイプと
スタジオで音をチェックするために、音を拾うタイプがある。
スタジオモニターとは、後者の業務用ヘッドホンを指す。

店に行くと、ソニーはMDR-CD900STの他に、
MDR-7506というモデルがあった。

着け心地はどちらもよいが
持ち運びを考え、折り畳みができる7506を買った。
12000円くらい。 

家に帰って、映画を1本観たが、
耳も頭も疲れず、快適である。

音は籠らずクリアに聞こえる。
夏は暑いんだろうな…

2014年1月30日木曜日

嫌いをなくす

映像翻訳者を志望する人は、
映画やドラマが好きな人が多い。
「好きだから」、字幕翻訳の仕事がしたい。

「好きだから」、頑張れる。
でも、「ただ好きなだけじゃダメ」。

ここで言う「ただ好き」な状態って、一体何だろう。 

「自分の好みの映画/ドラマを見るのが好き」かなと思う。

もちろん、好きを追求したり、専門を持つのは大事。
でも、制作会社で字幕のチェックと制作進行管理をしていて、
日々思うのは、アレルギーをなくすことも
また重要だということ。
 

売れっ子のフリーランスなら選り好みして
断ることもできるかもしれないが、
仕事となれば、作品は選べないのだから。

新年最初の仕事は
血生臭い映画のスポッティングだった。

レンタル版ではカットされた残虐な描写が
セル版用に挿入されたので
再度スポッティングをすることになった。

レンタル版でも、血みどろなのに、
首が飛んだり、頭が二つに割れたり、
腹にぐさっと刃物を刺すと、ぱっくり割れて、
にょろっと内臓が出るような
グロテクスなシーンが追加されて、
セル版はさらにパワーアップ。


絶対、観たいと思わないし、
人にも勧めにくい映画である。


できれば凝視したくないシーンを
フレームのコマ送りで
字幕を出すタイミングを調整する。
ぐちょっという血の音が、
セリフのIN点を隠すかのようになっていると、
何度もスローで再生して、音を探す。
勘弁してくれ、と思った。
お昼ごはんは、食べた気がしなかった。


ふと、先人たちの「ただ好きなだけじゃダメ」って

こういうことを言ってたのかなと思った。

好き嫌いを言わないこと。
趣味と仕事の境目は、そこにあるのだろう。