2013年10月30日水曜日

面接の結果

制作会社の面接を受けた、のつづき。

先方の業務が立て込んでいるので
面接の結果は来週以降になると言っていた。

にも関わらず、面接の2日後にメールが来た。

イヤな予感がした。
こんなに早いなんて。

“慎重に検討しました結果、~”

来た。これ。
今後のご活躍をお祈りする系の流れだ。

と思ったら、採用であった。
びっくりした。

映像翻訳に関わることができる仕事だ。
うれしい。
でもちょっと不安でもある。

2013年10月28日月曜日

エロへの耐性

制作会社の面接を受けている、の続き。

先方に確認されたのは、
エロがOKかということだった。

邦画のポルノも扱っているが大丈夫か、と。
事務所内のPCが男女の絡みが映っている場合もあるし
ウェブサイトの作品リスト一覧の情報更新をすることもある。
なお、AVではない。
どうやらアジアでは日本のピンク系映画が人気らしく
問い合わせが最も多いのだという。

人類の半分は男なのだ。
エロ市場は不況知らず。縮小するはずはない。
大抵の制作会社はエロを扱っているのではないかと思う。
表向きには書かないだろうけれど。

翻訳する映画にポルノはないが
残虐なシーンを含むこともある。
そういう字幕のチェックすることもある、という。

この際、エロでもグロでも何でもOKである。
優等生の素材ばかりじゃないだろうなと私は思っている。

「バイオレンス系は割と好きなので大丈夫だと思います」と答えた。

2013年10月26日土曜日

前向きな面接

制作会社の面接に来た、の続き。

まず初めに先方は私の職務経歴書が分かりやすいと褒めてくれた。
SSTを使える人で、ここまで書いてくれる人は
中々いないと言う。

1枚目には、職歴とそれぞれの期間、3行づつの業務内容、資格、使えるソフトを書いた。
2枚目には、学校のコース修了年月と
これまでの映画祭など翻訳のリスト、志望理由が書いてある。

テンプレートのような職務経歴書だと思うのだが
かえってそれがよかったのかもしれない。

先方は前向きだった。
好意的過ぎて恐縮した。

「色んな職場を経験されていらっしゃる」
転職回数の多さをこんなにポジティブにとられたのは初めてである。
大抵は離職理由などを追及されて、
尋問されているような気持ちになったものだった。

「吹き替えまでされるというのは、これは相当ですね」
いや、あの、それは、授業で吹き替えの授業があっただけで、
あの学校の出身の人はみんなやってます。
学校のコース内容に、「字幕、VO、吹き替え」と書いていた。

「もうプロの翻訳家として、やっていらっしゃるんですね」
いえ、いえ、そんな大げさな。
尺は長くて25分だし、報酬を頂く案件もあったけれど
ボランティアを含めても
数えるほどしか受注していませんよ。

チェックをやってもらおうと思っていたけど
翻訳も頼めるなら、それでもいいね、と先方。
それは、うれしいな。

和やかな面接だった。
私の反応を見るために
こんなに友好的なのだろうか、とさえ思った。

2013年10月24日木曜日

面接に行く

制作会社で字幕翻訳のチェッカーを募集していたので
応募した、のつづき。

履歴書と職務経歴書をメールすると
2日ほどで面接したいと連絡が来た。

その会社はウェブサイトは会社概要の1ページしかないし
関連する情報が全く見つけられなかった。
会って確かめるしかない。
私は年休を取り、面接に向かった。

古臭いビルだった。
1階は居酒屋でエレベーターホールは暗い。
日陰で怪しく、空気の澱んだ雰囲気。
嫌いじゃないなと思った。
朝日の差すガラスカーテンウォールの高層ビルに
綺麗な格好をした人々が吸い込まれていく雰囲気は
背伸びしているみたいでちょっと疲れる。

エレベーターが開く。
目の前の部屋の扉が開いていた。
何だ?この会社、と思った。

その隣に、私が受ける会社の名の記したドアがあった。
ノックすると、
「あー、そっちじゃない、こっち、こっち」
と後ろから男性の声がした。
振り返ると、スーツの男性が
開けっ放しの部屋の入口で手招きしている。

6人掛けの打ち合わせテーブルがあり
席につく。
先方は3人だった。

2013年10月22日火曜日

制作会社に応募した

私は、派遣社員である。
来年の3月で満3年となる。
私の契約だと、3年以上の勤務はできない。

10月、現職で大きなイベントが終わりひと段落がつき、
そろそろ本格的に探し始めようかなと思った。

私のレベルでは、翻訳だけで食べてはいけない。
経済的に専業主婦にはなれないので
会社勤めをしなければならない。

次はどんな仕事を選ぼうか、とずっと悩んできた。

映像翻訳がしたくても会社のスタッフとして翻訳の求人はめったに見たことがない。
翻訳に応募するのではないから
どうするのがよいのか、2つの方向で迷っている。
業界を取るか、時間を取るか――。

日中は、映像翻訳とは関連がないけれど、残業のない派遣の仕事をして、
夜は翻訳ができるように、時間を確保しておいたほうがいいのだろうか?
無味乾燥で退屈なビジネスの話でも、
手を動かして翻訳ができる。

一方、制作会社に応募してアシスタントでも何でもよいから業界に入れば
翻訳の前後のプロセスが分かっていいだろうなと思う。
でも、派遣と違って残業が多そう。
翻訳を担当できない場合、
拘束時間が長い仕事を選んでよいのだろうか?
それでも、現場を知る環境にいたほうがいい。
フリーでやっていけるまでには数年かかるのだから。
人脈もプラスになるだろう。

迷いながらも、これまで制作会社5社に応募してきた。
全て不採用だった。

先日、制作会社での字幕翻訳のチェッカーの求人を見つけた。
懲りずにまた応募した。

2013年10月21日月曜日

映画「ポルトガル、ここに誕生す」

先日、カウリスマキの最新作を観てきた。


「ポルトガル、ここに誕生す」
4人の映画監督によるオムニバス映画。


1本目がカウリスマキ。
ほとんどセリフのないショートムービー。

私と友達だけが、声に出して笑っていたけれど
他の観客は全く笑わず、静かに見ていた。

彼の映画は「芸術的だ!」と言って
真面目に見るような、お高くとまった映画じゃないと思うのだが。

2本目、3本目はひどく退屈だった。
映画館で寝てしまったのは初めてである。
気がつくと4本目の終わり。
エンディングには、グレン・グールドが弾くバッハが流れた。心地よい目覚めであった。

2013年10月20日日曜日

カウリスマキがスキ

映画監督アキ・カウリスマキの映画は
わっはっはと笑うというより
むふふと静かにこみ上げてくる笑いのコメディーである。

登場人物は全員、苦虫を噛んだような、しかめっ面の大真面目。
それがどうも滑稽で可笑しい。
軽いジャブなのに、なぜかノックアウトされるような気分になる。

劇中の人物は笑わないし、冗談も言わない。
そもそもセリフが少ない。下ネタもない。
それで人を笑わせるのだからすごい。

カウリスマキ映画の特徴を3つ上げるとしたら…
 
(1)貧しい食事 
しかも、まずそう。彼の映画の登場人物は庶民なのだが、
それにしても貧乏である。
日本におけるフィンランドのイメージと言えば、
「スタイリッシュで、センスがよくって、いい暮らし」だろうか。
それらをぶち壊しにする貧しさである。
 
バゲットなんて、カチカチに硬くて
いつも力いっぱい、引きちぎっている。
ナイフで切ってもなかなか切れない。
でも、お酒はいつもおいしそう。

リンゴのお酒、カルヴァドスを飲む2人 『ル・アーヴルの靴みがき』

(2)唐突なストーリー

 

話が早い。トントン拍子で物語が進む。
でも、「そんなアホな~」という展開って
実は潜在的に皆が望んでいることなのかもしれない。

『浮き雲』

(3)きれいな色

 

無表情の役者とは対照的に、画面の色はとても鮮やかでロマンチック。
ターゴイズブルーの壁に立つ男性。
カウリスマキ節が全開のシーン。

『ポルトガル、ここに誕生す』


2013年10月19日土曜日

牛歩

飛行機の機内で上映するための映画の
字幕制作の打診が来た、のつづき。


有名な俳優が出ているカーアクションの映画だった。
(日本で劇場公開されるかは不明)


こういう映画が「仕事」として依頼がくるなんて
何だか夢みたいだなと思った。


今は分業でしか引き受けられないけれど
勉強を始めた頃には
実際に自分がこういう仕事に関わることができるなんて
いまいち想像できなかった。


日々の変化は感じられないけれど、
年単位で見た時には少しづつ進歩している。

ゆったりとした歩みである。
焦らず、しつこく、勉強するしかないなと思う。

2013年10月18日金曜日

一兎づつ

8月に映画の字幕制作の打診があった。
当時まだ日本では未公開の映画で、
飛行機の機内上映用のものだった。

やりたくて仕方がない案件だったが
後ろ髪ひかれる思いで断った。

難民映画祭の字幕制作(ボランティア)の真っ只中だったのだ。
これを落とすわけにはいかない。
それに、作業期間は盆休みだったので、夫の実家に帰省している。
映画祭をこなすのが精一杯。
短納期の案件を集中的にできる環境ではなかった。

新人は、たまのチャンスを逃すべきではない。
折角、仕事を振ってくれたのだ。

しかし、掛け持ちだろうが、何だろうが
勢いで仕事を受けて、先方に迷惑をかけたら
「次」はない。
二兎を追う者は一兎をも得ず――。

そんな思いが頭の中をぐるぐる回った。


また、仕事が巡ってくるとしたら数か月後かな。
予想どおり何もなく10月になった。

このまま年末まで暇なんだろうか。
あの時、断ったの、やっぱりまずかったかなと思っていた矢先のこと。

再び機内上映用の映画字幕制作の依頼が来た。
今度こそは「やります!」と引き受けた。
二度目の仕事だった。

2013年10月2日水曜日

「違和感」を考える

菅官房長官が、「違和感」という言葉で
ぼんやりと意見することについて
東京新聞の記事を読んだ。


官房長官は伝えるのが仕事である。
正しい日本語で明確な声明を発表してほしい。

「違和感があります」
翻訳の制作チームで互いの訳をチェックしあう場合、
見かける言葉である。

本当は、その言葉だけで、
「ああ、そうか、こういう表現の方がいいな」と
はっと別の案が思い浮かぶべきなのだろう。

でも、当の本人は正しいと思って書いているのだから
何がつながっていないのか
何が足りないのかが見えないことがある。
少なくとも私はそうだ。

翻訳者は制作者側に立っている。
違和感があるのなら、その理由を明確に
そしてコンパクトに言い表せなければならない。
ボールを投げている方向が違うのなら、
そっちじゃない、という言うだけではなく、
ストライクゾーンは、このあたりだと示したいものだ。

私は伝える側にいたい。
修正すべき理由や代案の方向性を言葉にできないのなら
制作者側ではなく、単なる視聴者としての感想に過ぎない。

だから、自分が他人の成果物に意見する場合は、
「違和感があります」とだけのコメントを残すのは避けるようにしている。
「違う」と突き返すだけなら簡単だ。

でも、うまく表現ができず「違和感」で逃げてしまうこともある。
そんな時、制作者になりきれない自分をもどかしく思う。