「耳と文章力 上手な文章を書く秘訣」
丸山 あかね (著)
よい文章を書けるようになるには、どうしたらよいか。
著者は、絶対音感のように、“絶対文章感”のようなものが
あるのではないかという仮説からスタートする。
著名な作家らに、文章を書くことについてインタビューをする。
それぞれに、キラリと光る言葉がある。
国語学者、大野晋は、「物事をよく見る洞察力と繊細な感受性が大事だ」と言う。
伝えたいことが明確であること、そしてそれを正確に伝えるために、文法にこだわることが必要だ、とも。
文章を書く力は「使わずにいれば、退化してしまう」と
井伏鱒二が何も書くことがなくても1日に3枚分の原稿を書いたことを例に挙げた。
その他、多数の作家のコメントをまとめると…
・たくさん読め
・たくさん書け。怠けると錆びる
・中身があることを書け
・書きたい欲求に駆られて書け
・客観性な視点を持て
・うまい人の真似をしろ
・読者を意識しろ
・短いセンテンスで書け
翻訳に照らし合わせて考えると
どれも「そうだなあ、肝に銘じよう」と、思う。
振り返れば、翻訳学校で何度も言われたことばかりで、
目新しいことを言っているわけではない。
どの講師も、自身の言葉で、色んな角度から
これらの心構えを伝えようとしていたことを思い出す。
学校を離れた今、こういう本を読むと
背筋がしゃんとする気分になる。
同じことが書かれていることは分かっていながら
手に取りたくなる。
自己啓発本のようなものかもしれない。
なかにし礼、勝目梓、藤沢周、重松清などインタビュー部分は面白い。
それぞれに重みのある言葉がある。
また、多くの作家の考えが、一冊にコンパクトにまとまっている点も良い。
大勢の文筆家に会う立場にある著者ならではのものである。
ただ、合間に軽々しく茶化す著者の文章と
随所に見られる自己アピールが余分だと感じた。
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