2009年7月30日木曜日

8: 夫と話し合う

翻訳会社を受けに行った帰り道。
夫に責められる。
今まで会計の勉強してたのに、何で映画の会社うけるの?と。
のつづき。

その夜、私はトライアルが出来なかったことに凹んでいた。
また、自分のこれからのことを考えて凹んでいた。

夫とのっちゃんと話した。

わたし、わかったんだよ。
会計の勉強をすることが、
会計士になることが、自分がやりたいことにつながるんだ、と
思い込んでいたことを。

トライアルで不思議の国のアリスを訳したら
すごく楽しかった。
私は、自分が間違っていたことに気づいた。

映像翻訳なんて、愛知にいた頃は学校もないし
仕事もない。雲のような存在だった。
だから、目指そうなんて考えもしなかった。
食べていけるわけがないと思った。

求人の中で自分の道を選ぶしかなかった。
結果的に、実務翻訳を目指す方向になった。

東京に来て、映画会社の求人があったり、
今日みたいな翻訳の求人があったりして、
ビックリした。

面接までこぎつけて、もしかしたら
無理じゃないのかもしれないと思ったら、
どうして、今までがんばらなかったのかを悔やんだ。

でも、そのおかげで、はっきりわかった。
私は、自分で自分に制限をかけて、あきらめさせていたんだ。
何てことをしてしまったんだ。
もう時間はもどってこない。

私は、ポロポロないた。
夫は、がんばれ、と言った。
のっちゃんは、やりたいことがわかってよかった、と言った。

60万のローンはまだ残っている。
どうしよう、と私はまた泣いた。
金なんて、後でどうにでもなる、と夫は言った。

つづく 

2009年7月29日水曜日

7: 夫に責められる

翻訳会社の一次試験は、トライアルとアンケートだった。
面接はなかった。
のつづき。
時計を見ると1時間半以上かかったみたい。

夫とのっちゃん(友人)は、近くの喫茶店で勉強をしていた。
地下鉄で試験のことを話す。

自宅の最寄駅を降りた。
夫は、「手取りいくらなん?」という。
「20万以上って書いてあるから、多分17・8じゃないかな―
だめなの?いいでしょ?私のことなんだから」
また、金?そりゃ、無いけどさ、我が家には。

夫がイライラしているのが、腹が立った。
「なんで?応援してくれないの?」
「そうじゃなくて。なんでコロコロ変えるんだよ。大原(簿記の学校)どうすんの?」
「・・・」
「そこ受かったら、絶対行かなくなるでしょう?
もったいない。ちゃんと考えろよ。最初にさ。ジャンルを決めるときに。
やりたいこと、やれよ」

そうだけど。
考えて、その時に一番正しいと思ったんだ。。。

ああ、大原に振り込んだ授業料。
もう戻ってはこない。。。
残るローンがイタイ。


仕事で取り戻そう。
あれは過ちだったかもしれない、でも、あのプロセスは必要だった、と後で言えるよう、
これから一生懸命がんばろう。

つづく

2009年7月28日火曜日

6: 翻訳会社のトライアル

翻訳会社の書類審査が通り、
一次試験を受けに来たら、
みんな普段着?!の続き。

トビラが開く。
男性と目が合う。

黒いシャツに黒いパンツ。
ドスのきいた視線に恰幅のよさ。
一瞬で社長だと思った。

「こんにちは!」と私は言うと、
こんにちはと感じよく返してくださった。
あ・いいひとだなと思った。


部屋に通され、PCの前に座る。

早速トライアル課題の指示がある。
ファイルを開けると、ディズニーのドキュメンタリーフィルムのベタ訳。

ナレーションは、格調高い雰囲気で、いささか大人向け、
アニメーションは子どもでもわかるように、
そして、歌の歌詞は生き生きと、リズムよく訳さなくてはならない。
アニメーション部分は、不思議の国のアリスだった。

難しかった。
自分の出来の悪さを痛感する。

でも、楽しい。
物語を訳すのってこんなに楽しかったっけ。

忘れていた。
私がやりたいことって、こういうことだったのに
何していたんだろう。
悔やまれて、泣きそうになった。

その後、アンケート用紙のようなものを渡される。

好きな映画とその理由、
人と変わった趣味、など100字程度で書いた。
家族について書く欄では、父について書いた。

別に仲が悪いわけじゃないが、あまり話をしたことがない。
父は自分のことをすすんで話す方ではなく
私に干渉することもない。
お互い照れくさいのか、人生の話などしたことはなかった。
しかし、私が東京に来てから、メールをするようになり
距離は離れたが、本当の距離は以前より近くなった気がする。

そういうようなことを書いているうちに、
すでに涙腺がゆるんだ私は泣けてきてしまった。

涙をおさえながら、他の項目も書き上げた。
 
変な人だと思われたかな。

つづく

2009年7月27日月曜日

5: スーツじゃないの?

私の転職に夫はいささか不満げだった、のつづき。

翻訳会社の一次試験の日がやってきた。
試験は、日曜日。

私は髪を夜会巻きにし、パンツスーツで向かった。

会社は、とあるマンションの一室。
受付で待つ。

すると、女性スタッフが迎えに来てくださった。

私以外に3人がいた。
ビックリしたのは、みな普段着だったということだ。

なんで?入社試験じゃないの?
翻訳ギョーカイって、こんな感じなの?

ちょっと、シンジランナイ!
あんた等、なめとんのん?
就職試験でしょう?

私だけ完全に浮いていた。

つづく

2009年7月26日日曜日

4: 賛成、ではない?

私は、派遣社員で秘書をしている。
ひそかに、とある翻訳会社に応募をしたら、
書類審査が通った、のつづき。

1次試験の前日。

夫に応募したことを告げた。 ビックリしていた。

夫の反応は今ひとつ、だった。


・給料が下がる。(30%ダウン)

・会計士はどうするの?(受けようとしていた)

腑に落ちないのはそんなところだった。

やっぱり金や安定よりやりたいことを求めるタイプなんだね、と言った。


「応援してくれないの?」
「そんなことはない」

じゃぁ、なんなんだ。
給料が下がる話をされ、
どうやって生活してくの?と責められたのは 寂しかった。

つづく

2009年7月25日土曜日

3: 忘れていた

もやもや派遣社員の私。
誕生日にふと見た求人にびびっと来て
応募した、のつづき。

2009年2月、公認会計士を目指し、借金をしてまで会計の学校に通い始めた。
夫にはすぐに言えなかった。

会計士をあきらめてよいのかどうか。
自分にそんな迷いがあった。
応募する映像翻訳の会社へ進むことは、会計士をあきらめるに等しい。

でも、私は翻訳がしたいんだ。
専門分野や資格の勉強は、翻訳の職に就くというゴールのための
ただのプロセスなのだ。

これで、翻訳の職につけるのなら、
その分野で一生懸命がんばるのみだ。

数日後、書類審査が通った。
1次試験は、英日の字幕と日英の資料翻訳のトライアルだという。

私は、映画の字幕の仕事にかかわるなんて、雲の上のようなことだと思っていた。
正直、字幕や吹き替えの勉強なんてしたことがなかった。

早速、バベルの無料講義を聴き、アルクで字幕のコーナーを読み漁っては訳してみた。
字幕には、文字制限、数字の表記の仕方、句読点についてなどルールがある。

楽しかった。
忘れていた。
翻訳を面白いと思えることを。


つづく

2009年7月24日金曜日

2: 滑り込みセーフで応募

妊娠したらクビの派遣社員。
不安定で、残業もそこそこ、交通費無し。
この業務を、あと5年やりたいかと言われたら、絶対にNoである。
それなのに、このまま続けて何になるのだろう。

専門性のないまま年をとり、新たに仕事を見つけようとしても
不安定で単価の安い、単純作業しか応募できないだろう。
 
女の価値は、1秒ごとに下がる――。
「闇金ウシジマくん」にでてくるセリフが心に刺さる。

変わらなくちゃと、公認会計士を目指し勉強を始めて5ヶ月。
という、前回のつづき。


転機は7月のとある日曜、私の誕生日に訪れた。
12時を回る前に、夫とのっちゃん(友人)と中華料理屋にいく。

日付が変わり、31歳になった。
ビールで乾杯。餃子を食べて帰る。
翻訳がしたいと思っているのに、まだ手が届かない。
それなのに、31歳に「なってしまった」と思った。
今まで自分は何をしていたのか。
手放しで喜べない、もやもや複雑な誕生日を迎えた。
夜中に家路に着き、
とらばーゆをたまたま見てみると、
「翻訳・通訳」の仕事が一件。

映像・字幕の翻訳者の募集だった。
私は、ビックリした。
期限はあと1日。

誕生日に出会った求人に
勝手に運命のようなものを感じた。
夜な夜な履歴書をパチパチと入力し、送信した。


つづく

2009年7月23日木曜日

1: 派遣の秘書の話

とある監査法人で派遣社員として秘書をしている。
秘書といったら、きれいな響きかもしれない。

でも、何してるのかといわれれば、それは雑用である。
私は本当は翻訳がしたい。
でも、どこも受からず、結局今の職場にたどり着いた。
秘書から抜け出したかった。
そのために、自分に足りないものは何だろうと考えた。

専門分野がない。
経済や会計を勉強しようと思った。

また、監査法人の組織の中で、事務から脱するには
会計士になるしかない。

私は、2009年2月から資格の大原に通い始めた。
70万円もした。

経済的に厳しいので、ローンを組んだ。
授業にはなかなかついていけない。
簿記は考え方を覚えるのが大変だ。

それでも、粛々と続けるのみだった。
あるいは、そうする他ないと自分に思い込ませていたのかもしれない。


つづく