2014年8月24日日曜日

6月のニューヨーク



ロビン・ウィリアムズが出演している映画で一番好きなものは、「フィッシャーキング」である。
監督は「12モンキーズ」や「未来世紀ブラジル」のテリー・ギリアム。

誰かを救おうと働きかけることで、自分自身も救われる。
人と人のつながりを通じ、救いの連鎖が幸せを呼ぶ。
嘘みたいに幸せがどっと押し寄せて、気持ちがよくなる映画。

グランドセントラル駅で、くるくると踊るようなシーンが素敵だった。

「6月のニューヨークは好きかい?」
このフレーズが繰り返し出てくる。

6月のニューヨーク。行ってみたいな。

2014年8月22日金曜日

「フェルマーの最終定理」


『フェルマーの最終定理』
サイモン・シン著 青木薫訳

私は高校数学でつまづいた。数学の素養はない。
この本を読み終わったあとも
モジュラー形式がどんな世界なのかも想像できない。
楕円方程式なんて、初めて聞いた。
それでも本書は面白かった。

1994年、アンドリュー・ワイルズが
約360年間どんな数学者も解けなかった問題を完全に証明した。


17世紀の数学者ピエール・ド・フェルマーによる命題だ。
フェルマーの最終定理と呼ばれている。

この問題は、ピタゴラスの定理に由来している。
本書は命題が生まれる前のピタゴラスの時代から1994年までを描く。

有名な数学者たちが、この問題に挑んでは失敗してきた。
ついには賞金がかけられる騒ぎにまで発展。
命題をめぐるドラマに心動かされるノンフィクション。
ワイルズが取り組んだ8年間の物語、とりわけ最後の1年間の話は感動的だった。

翻訳には、唯一の答えはない。
正解はあるが、正解の範囲があるだけ。
範囲の中で最善を尽くして、もっとよい表現はないかと模索するのが苦しくも楽しい。
正解の幅とその可能性が翻訳の面白いところだろう。

一方、数学は曖昧さを一切排除した完璧な世界。
空気も、摩擦も、抵抗も存在せず、普遍的。
数字が古びることはない。「証明」は絶対的だ。
答えをバシッと決めれば、
唯一の答えが永遠に真であり続ける数学の世界に憧れを感じた。

デカルトの言葉が出てくる。
超越的な問題を論じるときは、超越的に明瞭であれ
著者はまさにそれを実践している。
複雑な説明を柔らかい言葉で言い換えて
「難しくなりそう」という読者の不安を消し去ってくれる。

例えば、証明の鍵となる「帰納法」について、彼は「ドミノ倒し」と表現している。
nが真で、n+1も真ならば、すべての自然数において無限に真、ということをドミノにたとえたのだ。

最初のドミノ牌を倒し、次のドミノ牌も倒すことができれば、どこまでも牌を倒すことができると説明する。

この本もしかり。第一章で心を掴まれて、次のページもまたその次もと、一気に読みたくなる本だった。

2014年8月17日日曜日

40年目に好きになる

ハローキティは、今年40周年を迎えた。
これまで、キティには全く興味がなかった。

シンプルな絵は、ミッフィーの模倣に思えた。
目が黒い点であること、まっすぐ正面を見ていることなど。

ミッフィーは大好きだ。絵本の世界があるから。
背景の色が物語の中で重要な役割を果たしている。
一枚の紙にブルーナが余白をたっぷりとって配置し
筆でゆっくり引いた、揺らぎのある線で描かれる。

キティは対照的だ。
キャンバスの上の世界というよりキャラクターグッズのために生まれた。
商業的すぎて、好きになれなかった。

ところが、今年になって急にかわいく思えてきた。
キティは、どんなかぶり物も厭わない。
色んなものとコラボレーションをする。
フグになったり、みかんになったり、キノコになったり。
サンリオピューロランドの赤字を背負って
頑張っていたんだ、と気になるようになり
見ているうちにキティが愛らしく思えてきた。

最近では、ペコちゃんとコラボレーションをしている。
キティは、口がないのがトレードマーク。

しかし、そのアイデンティティをあっさり捨て、ペコちゃんになってしまった。
潔い。
ペコちゃんとハローキティのコラボお菓子発売!
相手を選ばず、仕事をしまくるキティ。
来るもの拒まず、か。
フリーランスもかくありなん、かな。

コラボしているキティを見ると、私も仕事がんばろう、と思う。

2014年8月9日土曜日

ブラックなレート

毎月テキストの日英翻訳を翻訳者にお願いしている。
そのレートの安さに心が痛む。

通常、1文字あたりの料金で設定するのが多いと思うが
その案件はA4サイズ1枚で5,000円。

「フォントは小さくして文字ぎゅっと詰めてね」と引き継ぎを受けた。
「今まで嫌がらせかってくらい、ぎゅうぎゅうで送ってたから(笑)」

いや、笑えない。

この案件は、クライアントから受注したものではなく
事務所の広告宣伝。純粋な費用である。
発注する側としては、費用を抑えたいところだが
対個人事業主にレート叩き
とにかく安くという圧力には嫌気が差す。
ある種パワハラじゃないのだろうか。

前任者の送っていたファイルを見ると
フォントは10.5で、余白を「狭い」に設定している。
まあ、10.5なら、常識の範囲かもしれない。
でも、「狭い」は悪意を感じる。

計算するとペラ5,000円で、1文字3.9円。

納期は翻訳者任せで、いつ納品してもよいからといって
日英翻訳で、1文字4円以下だなんて、プロに頼むレートではない。
せめてペラ1万円くらい出せないのだろうか。
月に1~3枚で、大量にあるわけではないのだから
単価を上げても、会社の企業活動を圧迫する額ではないのではないかと思う。
しかし、何の権限もない私は意見できる立場にいない。

余白の「狭い」を「デフォルト」に変更して広く取り、
段落ごとに1行挿入して、少しゆったりさせるのが、せめてもの抵抗。
それでも、1文字5円レベル。
ああ、ブラック…

2014年8月6日水曜日

みんなギリギリ

とある金曜日のこと。
「ブルーレイ用のxmlの書き出しだけ、お願いすることはできますか?」
とクライアントから電話。

翻訳済らしくSDBはあるとのことだった。
ええ、いいですよ、と答えた。
納期については、TCが合っていれば、すぐに出力するので1時間以内。
合っていない場合は再スポッティングになるので
最低でも3~4日くらい頂けると助かります、と説明。

100分くらいのスポッティングなら本当はそんなにかからないが、
他の案件が動き出した時のためと、
事務所の雑務なども考慮し、残業をしないベースで3~4日くらいと答えている。

ところでスケジュールは先が決まっているのかを聞くと
「いやあ、これ実は危ない橋で――」
と彼は続けた。

「来週の金曜日に劇場公開日で、
映像が届くのが火曜か水曜なんです。
で、BD作って金曜に劇場で流したいらしいんです…」

「あはは!」
と、私は第一声で笑ってしまった。
「え!水曜に映像が届いて、金曜に公開ですか?
あの、それ、ほんとに大丈夫なんでしょうか?」

先方は
「ヤバいっす。確認して、動き出す場合は改めて連絡します」

その日は、これで電話を切った。

もしTCがずれていても、まあ、間に合わないことはない。
単館での上映の場合、だが。

水曜の夕方までに客先でエンコードしたMPEGをもらい、
夜な夜なハコ調整して、木曜の午前に納品。
木曜の午後にオーサリングして、夜に劇場へ届ければ間に合うのかな。

結局その後、連絡はなく、劇場公開日は過ぎた。
何の映画だったのかは知らない。
どうなったのだろうか。

予算も納期も、
どの会社もギリギリでやってるんだな…

2014年8月1日金曜日

Play on Words

ピンク映画の英語タイトルづけの際、気をつけるのは

・内容やテーマ、設定が分かるように
・販売先は英語ネイティブではないため、小難しくない単語で
・短いタイトルでリズムよく

シンプルなものを考えるのこそ難しく、頭を悩ます。

例えば
「女子大生家庭教師ひとみ」(仮題)

シノプシスを読むと、いい成績を取ると、お姉さまがご褒美をくれるらしい。
男子生徒はぐんぐん成績を伸ばし、志望大学に合格するというものだった。
そこで"Sweet Treat"とした。

韻を踏めると嬉しい。