2013年5月2日木曜日

現在に生きる


アマゾンの奥地に暮らす少数民族、ピダハンの言語には、
数や色、左右を示す言葉が無いと言う。
その言語を30年以上に渡り研究する言語学者ダニエル・L・エヴェレット。
彼が発表したピダハン語の特徴が、
言語学を始め、人類学、心理学の世界に波紋を呼ぶことに――。
ダニエルのフィールド調査の軌跡とピダハンの暮らしについてのドキュメンタリー。

元ネタは『The Grammar of Happiness』。
2012年のFIPA(TV番組の国際的なフェスティバル)でEuropean Jury Priseを受賞している。



ダニエルの目的は、もともとキリスト教の伝道師としてピダハンの村に入り
聖書をピダハン語に翻訳することだった。
そして、キリスト教の信仰を広めようとしていた。
しかし、ダニエルは、ピダハンと共に暮らすうちに、
信仰を広めるどころか、信仰を失ってしまう。

伝道師を無神論者にしてしまったピダハンって
どんな文化なの?
ダニエルの書籍を読んでみることにした。


皆同じようなことを考えるのか、図書館で予約をしたら、8人待ち!
12月に予約をしたのだが、4月にやっと順番が回ってきた。

ピダハンの文化では、直接的な体験だけが重視される。
人々は、目に見えるものを信じる。
他人から聞いた話を信じることもあるが、
その人が「直に」体験した話に限る。
その影響か、ピダハン語には、未来形や過去形にあたる形がほとんど見られないという。
直接的な体験を重視する文化が、現在形に表れている。

「過去」を思い患うことも「未来」を憂うこともなく、充実した「現在」を生きている
NHK 番組紹介より

驚くことに、ピダハン語には「心配する」に対応する言葉がないのだという。
振り返ると、私は心配してばかりである。
遠い将来も近い未来も。
この先、翻訳の仕事していけるんかな。
年取ったら、どうやって暮らすんだろう。
それはそうと、来月家賃払えるかな、など。

私は、いろんな情報に触れることや、視野を広げること
探究心を持つことに、前向きなイメージを抱いている。

ピダハンは、その対極にあると言っていい。
“現在”だけを見ている。そして、自分たちに有用で実用的な範囲に焦点を絞っている。
深遠なる真実や未知のすべてを解明しようとは思わない。
まるで、ネガティブに聞こえてしまう。
でも、この文化のもと、子どもから大人まで、幸せな暮らしをしている社会が長い間続いているのだ。
それは、彼らの考え方がすぐれていることの何よりの証拠である。

後悔の念に苛まれ、将来が不安で絶望的な時には、
ピダハンのことを思い出そう。
自分の視界がクリアな範囲だけにピントを合わせたら、
大切な現在を無駄にせずに済むかもしれない。

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