2014年1月30日木曜日

嫌いをなくす

映像翻訳者を志望する人は、
映画やドラマが好きな人が多い。
「好きだから」、字幕翻訳の仕事がしたい。

「好きだから」、頑張れる。
でも、「ただ好きなだけじゃダメ」。

ここで言う「ただ好き」な状態って、一体何だろう。 

「自分の好みの映画/ドラマを見るのが好き」かなと思う。

もちろん、好きを追求したり、専門を持つのは大事。
でも、制作会社で字幕のチェックと制作進行管理をしていて、
日々思うのは、アレルギーをなくすことも
また重要だということ。
 

売れっ子のフリーランスなら選り好みして
断ることもできるかもしれないが、
仕事となれば、作品は選べないのだから。

新年最初の仕事は
血生臭い映画のスポッティングだった。

レンタル版ではカットされた残虐な描写が
セル版用に挿入されたので
再度スポッティングをすることになった。

レンタル版でも、血みどろなのに、
首が飛んだり、頭が二つに割れたり、
腹にぐさっと刃物を刺すと、ぱっくり割れて、
にょろっと内臓が出るような
グロテクスなシーンが追加されて、
セル版はさらにパワーアップ。


絶対、観たいと思わないし、
人にも勧めにくい映画である。


できれば凝視したくないシーンを
フレームのコマ送りで
字幕を出すタイミングを調整する。
ぐちょっという血の音が、
セリフのIN点を隠すかのようになっていると、
何度もスローで再生して、音を探す。
勘弁してくれ、と思った。
お昼ごはんは、食べた気がしなかった。


ふと、先人たちの「ただ好きなだけじゃダメ」って

こういうことを言ってたのかなと思った。

好き嫌いを言わないこと。
趣味と仕事の境目は、そこにあるのだろう。

2013年12月29日日曜日

制作会社の理想と現実

私は学校やその付属のエージェントの基準しか知らない。
制作会社で字幕原稿をチェックする際、戸惑うことがあった。

中でも一番びっくりしたのは、
「誤字脱字以外はチェックしなくてよい」と
引き継ぎの際、言われたことである。

翻訳者にチェックバックを送ろうとまとめたコメントで
二通りに読める字幕や
つながりが分かりにくい個所、
日本語の造語の不自然さを指摘しても、
「まあ、意味が分かればOK」と前任者にカットされた。
「それに、考えれば分かる」と言う。

考えさせるような字幕は最低である。
一瞬思考が止まれば、読み切れないし
次の字幕も飛んでしまう。

「翻訳者に嫌われたくない」
前任者の理由はこれだった。

細かい指摘をすると嫌がられるかもしれない。
高いレートでもないのに短納期でやってもらっている。逃げられたら困る。
また、細かいところまでつめていく時間がないといったものだった。

自分の間違いや足りなかった部分を指摘されたからといって
会社を「嫌う」翻訳者がどこにいるだろう。
そんな人はプロとして、個人事業主としてやっていけるわけがない。

翻訳者の意図は大切にしたい。
そこを塗り替えようとは思わない。
翻訳者は、その作品を一番理解している人なのだから。
チェックする基準は、その字幕で意図が伝わるか否かだと思っている。

前任者が辞め、チェックのチェックをされることもなり
ここは直した方がいいと思う個所は心おきなく指摘している。
大先輩に向かって物申すのは生意気かもしれないが、
原稿がすべてであり、そこに上も下もない。
制作会社が翻訳者に対して弱腰になり、
やっつけ仕事でDVDが製品化され、
店頭に並ぶなんて納得できない。

良い作品にしたいという思いは、翻訳者もディレクターも同じ。
意見を対等に言い合えて、気持ちよく仕事ができる関係を目指したい。

2013年12月28日土曜日

新しい仕事

転職をした。

社員4人の小さな会社。
外国映画の日本語字幕を制作をしている。
劇場公開作品もあるが、ほとんどはDVD用の映画である。

まだ2か月目なので、今後どうなるのか分からないが、
月約4~5本映画の翻訳依頼が来るらしい。
登録している翻訳者は10人にも満たない。

私の名刺の肩書きは「ディレクター」である。
特に権限があるわけではない。
コーディネーター兼チェッカーと言えば分かりやすいと思う。
クライアントから字幕制作の依頼が来ると
翻訳者に発注し、仕上がった原稿をチェックし
修正があれば翻訳者に戻して
最終稿をクライアントへ納品する。

翻訳をすることはないけれど
映像翻訳の現場で働ける仕事に就けて
よかったなと思っている。

2013年11月9日土曜日

燃え盛る火に油を注ぐ

人は、資産がいくらになると、「お金がない」と言い始めるのだろうか。

同じ職場の人々とは温度差を感じる。
今日は「外にランチに行きましょう」と誘われていた。
寿司屋に入った。
一緒に行った女性は、2,000円のにぎりを頼んだのでびっくりした。

2,000円あったら夫婦2日間(昼食&夕食)は暮らせるなあ。
彼女が、我が家のお金のなさを知ったら
きっとドン引きするだろうなと思う。

我が家は、子供のいない共働き家庭だから、と
余裕があるように思われることがある。

でも、私は派遣だし、今は共働きではない。
夫は9月末で退職し無職。
家計はますます火の車。

私は、制作会社に就職が決まり
11月中旬に退職する。

それ自体は、うれしいのだが、
家計は苦しくなるので気が重い。

これでよかったのかな、と憂鬱である。
マリッジブルーってこんな感じなのかな…

2013年11月8日金曜日

現状維持

剣術を一生懸命練習しても、なかなか上達せず、
いつも仲間にからかわれている青年が愚痴をこぼす。

I'm not going to get any better.
ちっともうまくならないよ
ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」第一章 3話「冥夜の守人」より (吹替)

その言葉を受けて、彼の仲間ジョンがこう言う。

Well…You can't get worse.
でも、ひどくもならない
ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」第一章 3話「冥夜の守人」より (吹替)

2人は笑顔になる。

私は、はっとした。

知らない分野の翻訳を担当すれば、
色々調べて一時的に知識レベルや語彙は増やせるだろうけれど
最終的には日々の積み重ねがものをいうものだ。
すぐに上手くなる方法はない。

だから、多くの時間を費やし、地道に努力するしかない。
でも、なかなか前に進めず、いつまで経っても結果も出ないと
へこたれてしまう。

そんな時は、「何事も使わないと錆びつくものである」ことを
忘れている。

私は途方に暮れることが時々、いや、しょっちゅうある。
そんな時に、結果だけを求めない、このセリフを思い出したい。

現状を維持していくこともまた大切である。