「主婦になるのが一番いいよ」
ずっと昔、とある先生に言われた。
主婦は経済的に自由で、時間がたくさんとれる。
だから強いよね、と彼は言う。
雑誌やセミナーでも、こんなことを言ったら、
今ならフェミニストに怒られるかな。
でも、これも1つの真実だと思う。
主婦は金と時間の問題をクリアできる。
無職で生活できる金銭的余裕があるのは強い。
また、家事などあるにせよ、会社ほど強制力をもって一定の時間を拘束されるわけではない。
会社勤めをしていると、残業がなくたって8時間は会社にいるし、
通勤時間が1時間と仮定すると、少なくとも10時間は拘束される。
翻訳者として食べていけない間
いかに暮らしていくのかをずっと悩んでいる。
翻訳の仕事がしたい。
でも生活ができない。
定収入が欲しいので会社に勤める。
だから平日の夜と土日しかあけることができない。
そもそも新人に回ってくる仕事は少ないのに、
スケジュールが合わないといって字幕の仕事を断り、
あるいは手を挙げず、経験が積めない。
翻訳がしたいのに、なぜ折角の仕事を断り、会社で働いてるんだろうか。
でも今すぐ会社を辞められるか?
仕事のあてがあるわけでもない。
考え出すと、永遠のループである。
結局家賃が払えないから会社勤めを続ける、という結論に至り
一旦ループが止まる。
でも、気持ちは翻訳がしたいから、またぐるぐると回り始める。
私は会社を辞めることにした。
念願の主婦になる。
しかし経済的な面をクリアして出した答えではない。
ただ単に、綱渡りをする覚悟ができただけである。
綱と言っても、丈夫で太くはない。
クモの糸のように細く、そしてもろい。