2013年12月29日日曜日

制作会社の理想と現実

私は学校やその付属のエージェントの基準しか知らない。
制作会社で字幕原稿をチェックする際、戸惑うことがあった。

中でも一番びっくりしたのは、
「誤字脱字以外はチェックしなくてよい」と
引き継ぎの際、言われたことである。

翻訳者にチェックバックを送ろうとまとめたコメントで
二通りに読める字幕や
つながりが分かりにくい個所、
日本語の造語の不自然さを指摘しても、
「まあ、意味が分かればOK」と前任者にカットされた。
「それに、考えれば分かる」と言う。

考えさせるような字幕は最低である。
一瞬思考が止まれば、読み切れないし
次の字幕も飛んでしまう。

「翻訳者に嫌われたくない」
前任者の理由はこれだった。

細かい指摘をすると嫌がられるかもしれない。
高いレートでもないのに短納期でやってもらっている。逃げられたら困る。
また、細かいところまでつめていく時間がないといったものだった。

自分の間違いや足りなかった部分を指摘されたからといって
会社を「嫌う」翻訳者がどこにいるだろう。
そんな人はプロとして、個人事業主としてやっていけるわけがない。

翻訳者の意図は大切にしたい。
そこを塗り替えようとは思わない。
翻訳者は、その作品を一番理解している人なのだから。
チェックする基準は、その字幕で意図が伝わるか否かだと思っている。

前任者が辞め、チェックのチェックをされることもなり
ここは直した方がいいと思う個所は心おきなく指摘している。
大先輩に向かって物申すのは生意気かもしれないが、
原稿がすべてであり、そこに上も下もない。
制作会社が翻訳者に対して弱腰になり、
やっつけ仕事でDVDが製品化され、
店頭に並ぶなんて納得できない。

良い作品にしたいという思いは、翻訳者もディレクターも同じ。
意見を対等に言い合えて、気持ちよく仕事ができる関係を目指したい。

2013年12月28日土曜日

新しい仕事

転職をした。

社員4人の小さな会社。
外国映画の日本語字幕を制作をしている。
劇場公開作品もあるが、ほとんどはDVD用の映画である。

まだ2か月目なので、今後どうなるのか分からないが、
月約4~5本映画の翻訳依頼が来るらしい。
登録している翻訳者は10人にも満たない。

私の名刺の肩書きは「ディレクター」である。
特に権限があるわけではない。
コーディネーター兼チェッカーと言えば分かりやすいと思う。
クライアントから字幕制作の依頼が来ると
翻訳者に発注し、仕上がった原稿をチェックし
修正があれば翻訳者に戻して
最終稿をクライアントへ納品する。

翻訳をすることはないけれど
映像翻訳の現場で働ける仕事に就けて
よかったなと思っている。